令和5年度「教えて!介助犬」(3月20日)

3月20日(水曜・祝日)に「教えて!介助犬」を開催しました。講師の認定特定非営利活動法人 兵庫介助犬協会の理事長・北澤光大さんとPR犬アリシアちゃんと共に、ユーザーさんとその介助犬も一緒に参加してくださいました。前回の「教えて!介助犬」にご参加いただいたときは合同訓練中でしたが、この度、介助犬の認定試験に合格され、実際のユーザーさんの元に迎え入れられることが決まりました。おめでとうございます。
現在、「身体障害者補助犬認定証」の発行を待っておられるそうなので、まだ写真掲載でのご紹介はできないのですが、「皆さんに介助犬のことを知っていただけるのが嬉しいです」と語ってくださいました。

講師 認定特定非営利活動法人 兵庫介助犬協会理事長・北澤光大さんと参加者の皆さん

最初に、身体障害者補助犬である「盲導犬」「聴導犬」「介助犬」の違いについて説明してくださいました。

目が見えない(見えにくい)人に段差や曲がり角を知らせる等して歩行の手伝いをする「盲導犬」は、例えば段差のあるところでは段差を上がったところで静止し、盲導犬自身が装着しているハーネスの角度や高さを変えることで、ユーザーさんに段差があることを知らせるそうです。

耳が聞こえない(聞こえにくい)人にインターフォン等の音を知らせる「聴導犬」は、前肢でユーザーさんの膝にタッチして音が鳴っていることを知らせて、音が出ている場所に誘導します。家の中だけでなく、外出中に車のクラクションや自転車のベルの音等がしたときも、前肢で膝にタッチしてユーザーさんに知らせているそうです。

手や足が不自由な人を手伝う「介助犬」は、落とした物を拾ったり、衣服や靴を脱がしたり、ドアの開閉等、ユーザーさんの障害の種類や程度に応じてオーダーメイドのトレーニングを受け、様々なサポートを行います。

「ほじょ犬マーク」のステッカーが貼られている施設がたくさんありますが、このマークは「身体障害者補助犬法」啓発のためのマークです。身体障害のある方が身体障害者補助犬を同伴して、ありとあらゆるお店・施設の利用が認められているということを社会に周知させるものですので、マークの貼っているところだけが利用可になっているという意味ではなく、すべての場所で受け入れなければいけないということが法律で決まっています。しかし、現状ではまだ入店を断られる場合もあるそうです。この「ほじょ犬マーク」を通じて、補助犬が生活に必要な様々なサポートを行い、障害のある方々が外出しやすくなるなど社会とのつながりを深めていることを多くの方に知ってもらう必要があります。
こうべ動物共生センターにも、このステッカーを貼っている場所が4ヶ所あります。来所された際には是非探してみてください。

次に、介助動作のデモンストレーションを見せていただきました。家の鍵など小さなものやカードのように薄いものを落としてしまったとき、介助犬は前歯や舌を使って飲み込まずに拾ってユーザーさんに渡しますが、薬やハサミのような尖ったものなど、口にしてはいけないものや危険なものをくわえてしまわないよう、「テイク(取って)」という指示があったときだけ拾うようにトレーニングされています。

車椅子とベッドの移乗の際に転倒してしまうと、40cmほどの高さがある車椅子には、腕の力だけで座ることができず、家族や友人など他の人に助けてもらうことが必要になります。そのような場合は介助犬が携帯電話を探して持って来てくれると、ひとりで過ごしていても安心です。携帯電話の液晶の破損を防ぐために、携帯電話には紐を付けておき、その紐をくわえて運んでもらいます。

ベッドで寝ているときなど、自分ですぐに動けない姿勢のときに水分補給をしたい場合は、介助犬が冷蔵庫の中の飲み物を持って来てくれると助かります。冷蔵庫だけでなくペットボトルにも紐が付けられており、介助犬が運びやすいように工夫されています。

靴を脱ぐサポートも見せてもらいました。「ユーザーさんの正面にまわり、真後ろに引っ張ると脱ぎやすくなります」と北澤さんが説明してくださいました。自分で靴を脱ぐのに時間がかかる方は外出をあきらめることもあるそうですが、このように介助犬がサポートしてくれると、時間もかからず外出することが可能になります。

介助動作のデモンストレーションの後、「介助犬が仕事をさせられていてかわいそうという声を聞くことがあるかもしれませんが、介助動作のトレーニングはボール遊びやロープ状のおもちゃの引っ張り合いといったような遊びの延長として行っています。介助犬はルールのある遊びをしている感覚で仕事をしてくれているのです」と北澤さんが詳しく教えてくださいました。

例えば、ボールを人に投げたり転がしたりしてもらって、くわえて持ってくるという行為を繰り返すボール遊びは犬にとって楽しい遊びのひとつですが、この遊びで使うボールが「鍵」「携帯電話」等に置き換わります。「携帯電話」の場合には、それに紐をくわえるというルールが加わります。

ロープの引っ張り合い遊びは、口にくわえて強くひっぱると自分のものになるという感覚が楽しくなってきます。その遊びを応用して、トレーニングに使用する冷蔵庫や車椅子にはロープ状のものが取り付けられており、「冷蔵庫を開ける」「車椅子を引く」等の介助動作を覚えていくのだそうです。

今回はお子さんの参加も多かったので、最後に、犬との接し方について「犬の目線と同じ高さになるようにしゃがんで、手のにおいをかがせてあげてください」「いきなり頭を撫でようとせずに、顔の下から、胸、背中…と撫でていってください」と北澤さんにわかりやすく教えていただき、仕事着のケープを脱いだアリシアちゃんとの交流の時間を楽しみました。

参加者の方から、「介助犬が多い国はあるのですか」という質問がありました。
現在、日本では58頭の介助犬が活躍しているそうですが、日本では認定試験で合格すると認定証が発行されるので、認定証の発行数で実働頭数が把握できています。しかし、他国は日本ほど正確に数字を出していないのだそうです。「ユーザーさんが『この犬は私の介助犬です』と言ってしまえば介助犬という扱いになるというお国事情もあるので、アメリカは多いと言えるのではないでしょうか」とのことでした。

また、「介助犬のトイレや散歩はどうされていますか」という質問もありました。
ペットシーツで排泄するようにトレーニングされているため、ペットシーツを使用する場合が多いそうですが、ペットシーツを片付けることが難しいユーザーさんは、ひしゃくのようなものにビニール袋を取り付け、排泄物をビニール袋で受けて片付ける工夫をされているそうです。散歩については、ユーザーさんの普段の生活に合わせて、通勤経路や買い物への往復が散歩になるケースがあり、用事のないときは散歩として外に出られることもあるそうです。家族と同居されている方は、家族の方が一緒に散歩に行かれる場合もあると教えていただきました。

介助犬のニーズに関する質問もありました。日本全国で手や足の不自由な方は約190万人おられ、介助犬が適用となる障害の程度などから試算すると、介助犬との暮らしが望ましいと思われる方が1万5千人程度と推測されているそうです。現状では、今すぐ「介助犬が必要」として兵庫介助犬協会に申し出のある方は毎年10~20名くらいおられるとのことでした。
障害のある方の中には介助犬のことをご存知ない方もおられ、介助犬と暮らすための情報提供が充分でないことが課題となっているため、「まずは介助犬のことを知っていただくことが大切です」と北澤さんが参加者の皆さんに力強く伝えてくださいました。

令和6年度も「教えて!介助犬」の開催を予定しています。
日程が決まり次第、ウェブサイトでお知らせいたします。

多くの方のご参加をお待ちしています。

教えて!介助犬