令和5年度「いのちの教育」プログラム プログラムⅢ「動物のために私たちができること」(9月11日 神戸市立泉台小学校)

9月11日(月曜)、神戸市立泉台小学校の2年生2クラスの子どもたちに、「いのちの教育」プログラム プログラムⅢ「動物のために私たちができること」の授業を実施しました。この日は小学校のオープンスクールの日であったため、保護者の方も授業の見学に来られました。

「いのちの教育」プログラムは、下記のプログラムⅠ~Ⅲの3つのプログラムで構成されています。
・プログラムⅠ「私たちと動物の関わり(気づき)」
・プログラムⅡ「動物と私たちのいのちは同じ(共感)」
・プログラムⅢ「動物のために私たちができること(責任)」

まずは、これまでのプログラムⅠとⅡの「ふりかえり」を行いました。この「いのちの教育」プログラムでは、「ふりかえり」を大切にしています。次のプログラムに入る前に、前回の「ふりかえり」をすることで、子どもたちの記憶の中に学習効果が定着します。また、声に出して読んだり、自分の手で書いたりすることも効果があり、プログラムⅠの実施から2ヶ月が経過していましたが、「人間と動物はつながっている」という大切なキーワードをしっかりと大きな声で唱和してくれました。

プログラムⅠ「私たちと動物の関わり」では、【ペット】【家畜】【野生動物】というそれぞれ違った関わりをしていて、私たち人間とどのように「つながっている」のかを学びました。
「街」で暮らし、人間が最後まで世話をする【ペット】と私たち人間は「かわいい」「楽しい」「幸せな気持ちになる」という癒しの気持ち「いい気持ち」でつながっています。
「牧場」で暮らす【家畜】からは、肉やミルク、卵や毛糸等の人間の役に立つものを与えてもらっており、「家畜」と私たち人間は「健康」でつながっています。
「自然」の中で暮らし、自分たちの力で生きている【野生動物】は、一見、私たち人間とは関係が無いように見えますが、空気や水など、自然環境から受ける恩恵を共有しています。この空気と水をきれいに保つことで、お互いが「安心」して生きていけるので、自然を挟んで「野生動物」と私たち人間は「安心」でつながっています。

プログラムⅡ「動物と私たちのいのちは同じ」では、生きているからできること=「生きている証拠」を子どもたちと一緒に考えました。「生きている証拠」は「食べる」「排泄する」「寝る」「息をする」などが挙げられますが、その中で「心臓」が動いているという「生きている証拠」を確かめるため、拡張心音計という心臓の音を拡大してスピーカーから聞くことができる機械を使用して、子どもたち全員の心臓の音を聞き比べました。子どもたちは心臓の音を聞いたことを覚えていてくれて「楽しかったやつ!」「大きさや速さが違ってた!」と答えてくれました。
同じ人間でも、心音の大きさ、速さ、リズムも一人ひとり違います。自分の持っている「いのち」は世界でたったひとつのものであり、そのたったひとつの「いのち」は私たち人間だけでなく動物も同じです。そして、「動物も生きている」というキーワードも声に出して一緒に確認しました。

人間も動物も生きているなら「こんなふうに暮らしたい」と思っているのではないだろうかと考え、2枚のパネルの絵を見て動物の気持ちを想像しました。「早く散歩に行きたい!」「早く走りたいよ!」というような「嬉しい気持ち」「楽しい気持ち」と、「ひとりぼっちでさびしいよ」「一緒に遊んでほしいな」というような「さびしい気持ち」「悲しい気持ち」があることを子どもたちがイメージして、それぞれの気持ちに共感し、「動物にも心がある」ということを理解していきました。

プログラムⅠ、Ⅱの「ふりかえり」を行った後に、いよいよプログラムⅢのスタートです。プログラムⅡでは、違った場面が描かれた動物の気持ちを想像してくれましたが、「さびしい気持ち」「悲しい気持ち」の涙マークのままではなく、「嬉しい気持ち」「楽しい気持ち」のハートマークで動物たちが生きるために、私たち人間はどんなことができるのかを一緒に考えます。

まずは【ペット】に対してできることを考えます。ここでもそれぞれの場面が描かれたイラストのパネルを使用します。子どもたちが挙手して出してくれる意見を、教室のホワイトボードに書き込んでいきます。自分なりの方法で動物たちをハートマークにする方法を考えてくれるので、どんな意見であっても否定はせずに書き出していきます。

「一緒に遊ぶ」という抽象的な意見が出たときには、「どんな遊びをしたら喜ぶかな?」と声をかけて、「ボールを投げて遊ぶ」というように具体的なイメージに膨らませてもらいます。
「エサをあげる」「水をあげる」という意見に対しては、「お水はどんなお水をあげるのかな?」と問いかけると、「新鮮なお水!ずっと同じのがあったら嫌だし、飲めない」など意見がでました。
また、動物病院に連れて行くのは体調を崩したときだけでなく、病気の予防のためにも連れて行く必要があります。子どもたちから、「病院に行くのはしんどいときだけ」という意見が聞かれましたので、「ごはんが残っていたり、食べていなかったらどう思う?」と問うと「調子がわるい」など答えてくれました。体調を崩したときだけではなく、病気の予防のために連れて行くことも必要であると説明すると、「予防接種などでも病院へ行くことがあるんだ」と答えてくれました。
他にも「散歩する」「体を洗う」「オシッコ・うんちを片付けてきれいにする」「毎日声をかける」「撫でてあげる」などの意見が出ました。

次に、【家畜】に対して自分たちができることを考えます。
子どもたちには「牧場でお世話をする人になったつもりで考えましょう」と伝え、今度はそれぞれにミニホワイトボードを配って自分の意見を書いてもらいます。
ホワイトボードに自分の考えを書くという手法はプログラムⅡでも経験してもらいましたが、挙手をしてみんなの前で自分の意見を述べるのが恥ずかしい子どもにとっても、自分の意見を言語化できる方法です。発言の有無にかかわらず、自分の意見を記録したりまとめたりして、授業に参加したという一体感を子どもたちに感じてもらうことができます。

ホワイトボードに自分の意見をまとめた後、子どもたちに発表してもらいました。
【家畜】も【ペット】と同じく、いのちが終わるときまで人間がお世話をしますので、「毎日エサをあげる」「体を洗う」「病気をしていないか毎日観察する」「牧場に草を育てて食べさせてあげる」といったお世話の他、「掃除をする」「柵を広くしてもっと動けるようにする」など、【家畜】が暮らす環境についての意見もありました。
また、【家畜】は人間の役に立つお肉や卵、牛乳、毛などを与えてくれていることに気づくことで、食事のとき「いただきます」「ごちそうさま」と心をこめて言うことの意味を知り、「いのちをいただいている」という食育や給食指導にもつながります。

最後は、【野生動物】に対してできることを考えました。
【野生動物】は人間が世話をせず自分の力で生きている動物であるため、【ペット】や【家畜】のようにエサをあげたり、体を洗って清潔にしたりしません。では、私たちが野生動物のためにしてあげられることは何もないのでしょうか?
パネルの絵を見せながら「【野生動物】が生きている場所である自然に対してできることはないかな?」と子どもたちに問いかけました。考えるヒントとして、豊かな自然の中で生活する【野生動物】のイラストを見せて、こうした自然環境を守るために何ができるでしょうか…と伝えます。
2枚目のパネルには【野生動物】が困っている様子が描かれています。「困った顔をしているのはどうしてかな?」という発問に対し、子どもたちは【野生動物】の周りで何か起こっているのか考え、自然環境に対して配慮すべきことに気づいていきます。

子どもたちがホワイトボードに書き終えたところで、自分の意見を発表してもらいました。「ごみのポイ捨てをしない」「大きな声を出さない」「きれいな空気にするため車で近づかない」「ゴミは捨てずに持ち帰る」「木を植える」「自然を街にし過ぎない」など、それぞれが自分にできることを一生懸命考えてくれました。
小学生低学年の学校教育では、まだ「環境」という概念を授業の中では指導していませんが、このプログラムをとおして自然に環境のことにも思いを巡らせることができる内容になっていますので、「環境破壊をしない」という意見も出てくるようになります。こうしたきっかけを持ってもらうと、子どもたちはこれまでの経験やテレビ、本などの知識を元にして、人間や動物を取り巻く環境の大切さを自ら感じ取ってくれるようになります。

この授業では、「責任」のことを「約束を守る」と言い換えています。つまり「私たちと動物との約束」は、私たち人間が果たす「責任」と言うことができます。
ホワイトボードに列挙された「私たちと動物との約束」の中で、「今日から早速できると思うことはないかな?」と子どもたちに尋ねてみると、「給食!」と元気な声と笑顔が返ってきて、「残さないで全部食べる」「食べるときに感謝して食べる」と答えてくれました。

授業の最後に、「動物たちが健康に幸せに暮らせるよう、自分たちにできることを少しずつ行っていきましょう」と子どもたちに伝え、「いのちの教育」プログラムの全ての授業を終えました。子どもたちからは「もう終わり?」「また来てほしい」などの声も聞けました。
アンケートの中には、「人間と動物はつながっているのがよく分かった」「優しくしてあげたい」「いのちをもらっているので、感謝して残さずに食べます」「動物は物ではない。いのちがあるので世話をして遊んであげる」「気持ちよく過ごせるように、動物が生活する場所をきれいにします」「森や自然を取ったりせずに、森を掃除する」「街を増やさない」「山や川にゴミを捨てない」などの意見が記載されていました。

こうべ動物共生センターでは、神戸市内で「いのちの教育」プログラムを実施させていただける協力校を募集しております。3つのプログラムを全て学校で実施するだけでなく、最初は校外学習等でこうべ動物共生センター(しあわせの村)に来ていただいた際に実施し、残りのプログラムを学校で実施するなど、実施スタイルのご相談もお受けしておりますので、詳細につきましてはこうべ動物共生センターまでお問い合わせ下さい。

神戸市立泉台小学校でのプログラムⅠ・Ⅱの実施内容について、以下のリンクより実施レポートもご参照ください。 

プログラムⅠ

https://kobe-chai.jp/2023/09/inotinokyouiku-1-izumidaisyougakkou/

プログラムⅡ
https://kobe-chai.jp/2023/09/inotinokyouikupuroguramu230713sizumidaisyougakkou/

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