令和5年度 獣医師体験プログラム「多様な動物が生きる「地球」という環境」(7月28日)

猛暑の中、神戸市立王子動物園獣医師の伊藤慎治先生を講師にお招きして、獣医師体験プログラムを開催しました。

        講師 神戸市立王子動物園獣医 伊藤先生
 
神戸市民にとっては馴染みがある王子動物園は、パンダとコアラ、ウサギを同時に見ることができる日本で唯一の動物園であり、フラミンゴの総繁殖数も日本一で、約200羽のフラミンゴ(ベニフラミンゴ、ヨーロッパフラミンゴ)がいるということを最初に教えていただきました。


今日の大きなテーマは3つ。

1地球という環境を維持していくために

2動物園の飼育展示方法について

3動物園のお仕事

についてです。

最初に、地球という環境を維持していくために必要な、多様性・現在の状況・動物園の4つの役割についてお話していただきました。

「多様性」には生態系・種・遺伝子の多様性があり、地球上には様々な環境が存在し、そこに暮らす生き物がいます。

地球上の哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類を合わせた野生動物の数は87,082種いますが、そのうちの約20%にあたる17,716種もの種が絶滅あるいは絶滅が危惧されているそうです。

すでに絶滅してしまった動物種は776種。その中には日本のトキやニホンオオカミなどがいます。

人間の都合で、これらの動物たちが住む場所がどんどん奪われているのが「現在の状況」だそうです。

「動物園」の役割として、楽しむ・伝える・調べる・種の保存とありますが、その中の種の保存として、多様性を守るために、絶滅の危機に瀕している動物を世界の動物園と連携しながら、本来生息している環境ではない別の環境(生息外保全)で生きていける場所を与え、繁殖させるということがあります。最終的な目標は「本来の場所に復帰させる」ということで、パンダは中国で自然復帰の取り組みがなされているそうです。

動物園の飼育展示方法として、飼育方法については、飼育員が直接動物と接触することで健康管理を行う直接飼育、直接接触しないが柵越しなどで健康管理を行う間接飼育、遮蔽物越しに管理を行う準間接飼育があります。

展示方法としては、動物の本来持っている能力である、走る・食べるなどといった能力をひきだす行動展示、サファリパークのように生育環境を再現して展示する生態展示があります。

王子動物園では、ホッキョクグマのみゆきちゃんが年中雪で遊べるように、人工で雪を降らせる装置を設置しているそうです。

最後に、動物園の仕事とは?ということで、お話していただきました。

王子動物園は、飼育員30名、獣医師6名、そして受付や事務、設備を整えるスタッフ、売店のスタッフなど、多くのスタッフによって支えられています。

その中で、伊藤先生のような獣医師が受け持つ仕事としては、動物の健康を守ることになります。

診察や手術、健康診断など病気の予防、ワクチン投与などいろいろとありますが、調査や研究という役割は、動物園の獣医師の仕事の中でも大きなウェイトを占めているそうです。

また、動物園の獣医師は一般的な動物病院の獣医師とは違い、多種多様な動物(鳥や爬虫類、両生類など)も診察しなければならないため、対象は広範囲であって幅広い知識が必要となり、実際に働くことで勉強をしているとのことでした。

実際に、パンダやうさぎ、象の採血をしているところや、カバの歯の治療をしているところ、大型のライオンやヒョウにワクチンや爪切りをしているところなどの動画を見せていただきました。カバが大きな口を開けているところに手を入れて歯のゴミを掃除したり、ライオンを麻酔で眠らせている間に健康診断や爪切りをしたり、象の大きな耳から採血をしているところは子どもたちもドキドキしながら見ていました。

獣医師と飼育係とが、日々連携しながらこうして動物たちの健康を守っているのだそうです。

子どもたちのアンケートからも、「ゾウのけつえきけんさがおもしりかった」「パンダやカバ、ゾウや鳥などのしいくはいろいろなくふうがしていて、そのくふうが、とてもいろいろあっておもしろかったです」という感想がありました。

獣医師体験プログラムは、幅広い獣医師の世界を体験し、学びを深めることにより、人と動物の共生とは、人の生活に深く関わるものであることへの気づきを促し、様々な人と動物の共生の在り方について理解を深めていただけるプログラムです。
皆さまのご参加をお待ちしております。

獣医師体験プログラム