9月8日（木曜）、神戸市立泉台小学校の2年生2クラスの子どもたちに、「いのちの教育」プログラム プログラムⅢ「動物のために私たちができること」の授業を実施しました。ちょうど小学校のオープンスクールの日であったため、保護者の方も授業の見学に来られました。

「いのちの教育」プログラムは、下記のプログラムⅠ～Ⅲの3つのプログラムで構成されています。
・プログラムⅠ「私たちと動物の関わり（気づき）」
・プログラムⅡ「動物と私たちのいのちは同じ（共感）」
・プログラムⅢ「動物のために私たちができること（責任）」

まずは、これまでのプログラムⅠ、Ⅱの「ふりかえり」を行いました。
プログラムⅠの「人間と動物はつながっている！」という大切なキーワードですが、最初の授業から3ヶ月経っても、子どもたちの記憶にしっかりと定着していました。「ふりかえり」をしっかり行うことによって長期的に子どもたちの記憶の中に学習効果が定着します。この「ふりかえり」の重要性については、奈良県「いのちの教育」研究協議会においても指摘されています。

プログラムⅠ「私たちと動物の関わり」では、【ペット】【家畜】【野生動物】が私たち人間とどのように「つながっている」のかを学びました。
「街」で暮らし、人間が最後まで世話をする【ペット】と私たち人間は「かわいい」「楽しい」「幸せな気持ちになる」という「癒しの気持ち」（いい気持ち）でつながっています。
「牧場」で暮らす【家畜】からは、肉やミルク、卵や毛糸等の人間の役に立つものを与えてもらっており、【家畜】と私たち人間は「健康」でつながっています。
「自然」の中で暮らし、自分たちの力で生きている【野生動物】は、一見、私たち人間とは関係が無いように見えますが、空気や水など、自然環境から受ける恩恵を共有しています。この空気と水をきれいに保つことで、お互いが「安心」して生きていけるので、自然を挟んで【野生動物】と私たち人間は「安心」でつながっています。

プログラムⅠの実施内容については、以下のリンクより実施レポートをご参照ください。　
「いのちの教育」プログラム　プログラムⅠ「私たちと動物との関わり」（2022年6月9日　神戸市立泉台小学校）

プログラムⅡ「動物と私たちのいのちは同じ」では、生きているからできること＝「生きている証拠」を子どもたちと一緒に考えました。「生きている証拠」は「食べる」「排泄する」「寝る」「息をする」等が挙げられますが、その中で「心臓」が動いていることを確かめるため、拡張心音計という心臓の音を拡大してスピーカーから鳴らすことができる機械を使用して、子どもたち全員の心臓の音を聞き比べました。
同じ人間でも、心音の大きさ、速さ、リズムも一人ひとり違います。自分の持っている「いのち」は世界でたったひとつのものであり、そのたったひとつの「いのち」は私たち人間だけでなく動物も同じです。その一人ひとり違う個性を象徴するものとして、心臓の音を通して子どもたちに実感をしてもらいます。そして、「動物も生きている」というキーワードも声に出して一緒に確認しました。

人間も動物も生きているなら「こんなふうに暮らしたい」と思っているのではないだろうかと考え、２枚のパネルの絵を見て動物の気持ちを想像しました。「早く散歩に行きたい！」「早く走りたいよ！」というような「嬉しい気持ち」「楽しい気持ち」と、「ひとりぼっちでさびしいよ」「一緒に遊んでほしいな」というような「さびしい気持ち」「悲しい気持ち」があることを子どもたちがイメージして、それぞれの気持ちに共感し、「動物にも心がある」ということを理解していきました。

プログラムⅡの実施内容については、以下のリンクより実施レポートをご参照ください。
「いのちの教育」プログラム　プログラムⅡ「動物と私たちのいのちは同じ」（2022年7月14日神戸市立泉台小学校）

プログラムⅠ、Ⅱの「ふりかえり」で復習した後は、いよいよプログラムⅢのスタートです。私たちの周りにいる動物たちが「さびしい気持ち」「悲しい気持ち」を持ったまま生きるのではなく、「嬉しい気持ち」「楽しい気持ち」で満たされて生きるために、私たち人間はどんなことができるのか一緒に考えます。

まずは【ペット】に対してできることを考えます。子どもたちが挙手して次々に出してくれる意見を、ホワイトボードに書き込んでいきました。このとき、どんな意見であっても否定はせず、その意見が抽象的であった場合でもクラスの全員でそのイメージを共有できるようにします。

例えば、「一緒に遊ぶ」という意見が出たときには、「どんな遊びをしたら喜ぶかな？」と質問して、「ボールを投げて遊ぶ」というように具体的にイメージしてもらうのです。「エサをあげる」という意見に対しては、「犬や猫は何を食べるかな？」と尋ねて「ドッグフード」「キャットフード」といったように、動物専用のフードがそれぞれの動物の健康維持には適切であることを伝えます。子どもたちの中から出にくい意見としては「動物病院に連れて行く」というものもあります。体調を崩したときだけでなく、病気の予防のためにも連れて行く必要性について説明すると、子どもたちは自分が予防接種を受けたときの経験を思い出し、「ワクチン、打ったことある！」と応えてくれます。他にも「散歩する」「体を洗う」「オシッコ・うんちを片付けてきれいにする」「毎日声をかける」等の意見が出ました。

次に、【家畜】に対してできることを考えます。

子どもたちには「牧場でお世話をする人になったつもりで考えましょう」と伝え、今度はミニホワイトボードに自分の意見を書いてもらいます。ホワイトボードに自分の考えを書くという手法はプログラムⅡでも経験してもらいましたが、挙手をしてみんなの前で自分の意見を述べるのが恥ずかしい子どもにとっても、自分の意見を言語化できる方法であるためとても重要な手法であると位置づけています。発言の有無にかかわらず、自分の意見を記録したりまとめたりして、授業に参加したという一体感を子どもたちに感じてもらうことが大切であると考えています。

ホワイトボードに自分の意見をまとめた後、子どもたちに発表してもらいました。

「毎日エサをあげる」「体を洗う」「病気をしていないか毎日観察する」といったように、【家畜】と同じように人間が世話をする【ペット】にも共通して考えることができる意見だけでなく、「牧場を広くする」「暑くならないように日陰をつくる」「掃除をする」というような【家畜】が暮らす環境について考えた意見もありました。また、人間の役に立つものを与えてくれる【家畜】に対して、「動物のことを思って感謝して食べる」「大切に使う（毛糸で作ったもの）」といった意見も出ました。食事のとき、「いただきます」「ごちそうさま」と心をこめて言うことは、食育や給食指導にもつながります。

最後は【野生動物】に対してできることを考えました。

【野生動物】は人間が世話をせず自分の力で生きている動物であるため、【ペット】や【家畜】のようにエサをあげたり、体を洗って清潔にしたりしません。パネルの絵を見ながら「【野生動物】が生きている場所である自然に対してできることはないかな？」と子どもたちに問いかけました。

豊かな自然の中で生活する【野生動物】のイラストを見ることが、自然に対してできることを考えるヒントになります。

２枚目のパネルには【野生動物】が困っている様子が描かれています。「困った顔をしているのはどうしてかな？」という発問に対し、子どもたちは【野生動物】の周りで何か起こっているのか考え、自然に対して配慮すべきことに気づいていきます。

子どもたちがホワイトボードに書き終えたところで、自分の意見を発表してもらいました。
「ごみのポイ捨てをしない」「大きな声を出さない」「きれいな空気にするため車で近づかない」「森を破壊しない」「木を植える」「自然から動物を追い出さない」等、子どもたちは一生懸命考えてくれました。
小学生低学年の学校教育では、まだ「環境」という概念を授業の中では指導していませんが、こうしたきっかけを与えると、子どもたちはこれまでの経験やテレビ、本などの知識を元にして、人間や動物を取り巻く環境の大切さを自ら感じ取ってくれるようになります。

この授業では、「責任」のことを「約束を守る」と言い換えています。つまり「私たちと動物との約束」は、私たち人間が果たす責任と言うことができます。ホワイトボードに列挙された「私たちと動物との約束」の中で「今日からできると思うことはあるかな？」と子どもたちに尋ねてみました。家でペットを飼育している子は「もっと遊んであげる」と答えたり、給食の時間をイメージして「食べるときに感謝して食べる」と答えてくれた子もいました。

授業の最後に「動物が健康に幸せに暮らせるよう、自分たちにできることを実行していきましょう」と子どもたちに伝え、「いのちの教育」プログラムの全てのプログラムを終えました。
子どもたちには「いのちの教育」プログラムの実施前と実施後のアンケートに協力してもらっています。アンケートの結果がまとまりましたら、こちらのウェブサイトで報告させていただきます。

こうべ動物共生センターでは、神戸市内で「いのちの教育」プログラムを実施させていただける協力校を募集しております。3つのプログラムを全て学校で実施するだけでなく、最初は校外学習等でこうべ動物共生センター（しあわせの村）に来ていただいた際に実施し、残りのプログラムを学校で実施する等、様々な実施スタイルのご相談にも応じます。詳細につきましてはこうべ動物共生センターまでお問い合わせ下さい。

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