令和3年度「いのちの教育」プログラム プログラムⅠ「私たちと動物との関わり」(3月17日神戸市立押部谷中学校)

3月17日(木曜)、神戸市立押部谷中学校1年生3クラスの99名(当日出席者)の生徒さんがしあわせの村に校外学習に来られ、こうべ動物共生センターで実施している「いのちの教育」プログラムのプログラムⅠ「私たちと動物との関わり」を、体験学習としてクラスごとに受講してくれました。


現在、宮崎県や明石市、八王子市などの多くの自治体で導入されている「いのちの教育」プログラムは、2012年に奈良県で開発された主に小学生を対象としたプログラムです。こうべ動物共生センターの啓発・教育事業運営を委託されている公益社団法人Knotsは、同年6月より「いのちの教育」普及展開について奈良県と連携協定を結んで、10年にわたってプログラムの普及展開や内容のブラッシュアップなどに関わらせて頂いていますので、こうべ動物共生センターにおいても同プログラムを導入し、実施することとなりました。
そのプログラムの内容から、小学校だけでなく、中学校、大学など幅広い年齢層の生徒・学生さんを対象とした受講希望の問い合わせを頂いています。通常は小学生低学年〜中学年の子どもたちに実施することが多いのですが、中学生や高校生でも、改めて自分の身の回りにいる動物との関係性を見つめ直したり、高校生や大学生になると、将来、自分が指導者の立場になって子どもたちに伝える側としてのイメージを持ってもらったりすることができます。


プログラムⅠ「私たちと動物との関わり」では、まず、私たち人間が、どのように生きているか考えます。
「自分ひとりで生きていますか?」という問に、「家族に支えられて生きている」「学校では先生や友だちにも支えてもらっている」という頼もしい答えが返ってきました。



私たち人間は、多くの人に支えられて生きており、人間同士「つながっている」ということができますが、それでは、人間と動物は「つながっている」と言えるでしょうか?

私たちの身の周りにいる動物たちの「すみか」を大きく「住宅街(街)」「牧場」「自然」の3つに分け、それぞれのすみかにどんな動物がいるか考えました。




このプログラムでは、本物の動物の代わりに張り子の動物を使っています。
生体を使用しないことで、移送に伴う動物へのストレスの問題が解消できることは、動物福祉の観点からとても重要であると考えています。また、アレルギーや動物が苦手な子どもへ配慮することも、授業を行う上で大切なことです。さらに伴侶動物、産業動物、野生動物と分類分けした多様な動物との関わりを同時に学ぶことができる内容になっていますので、生身の動物がそこにいなくても、張り子の動物が子どもたちのイメージを広げることに貢献しています。





張り子の動物たちを、皆で協力して3つのすみかに分類した後、「住宅街」で暮らす動物たちは最後まで人間が世話をする【ペット】、「牧場」で暮らす動物たちは人間が世話をし、私たち人間に「いのち」を与えてくれる【家畜】、「自然」で暮らす動物たちは人間が世話をせず、自分たちの力で生きている【野生動物】であることを確認しました。



班ごとに相談しながらすみかに分類しましたが、自分たちが「ここかな」と思って置いた「すみか」が、別の「すみか」なのではないかと思われる動物もありました。


クマが住宅街に置かれていることに気づいた生徒から「クマは自然の中で暮らしているから野生動物だと思う」という意見がありましたが、住宅街に置いた生徒は「人の住んでいる住宅街に出てきているから」と理由を述べ、お互いに自分の意見を発表するだけでなく、「本来自然の中にいるクマが、どうして住宅街に出てくるのか?」といった問題にも気づいていきました。
ここで大切なことは、正しいすみかに置くということではなく、子どもたちが自分たちとそれぞれの動物との関わりを自ら考えて、「気づく」ということなのです。




そして、「ペット」と暮らすことで、私たち人間が「一緒にいて楽しい」「甘えてくれてかわいい」「幸せな気持ちになる」といったような癒しの気持ちを与えてもらえたり幸せな気持ちになること、「家畜」から「いのち」である肉やミルク、卵や毛糸等を与えてもらい私たち人間が健康でいられることを再認識します。そして、「野生動物」と私たち人間は自然の空気と水を共有しており、それらがきれいに保たれていることや、野生動物に近づいたりエサやりをせずにお互いに安全な距離を保つことで、相互に安心して生きられることに気づきます。こうしたことを学びながら、人間は地球上に生きるすべての「いのち」と「つながっている」のだと理解を深めていきます。




「私たちと動物との関わり」をプログラムⅠで学んだ後、この「いのちの教育」プログラムは、プログラムⅡ「動物と私たちの「いのち」は同じ」、プログラムⅢ「動物のために私たちができること」へと続きます。


今回の体験学習では、プログラムⅠのみの受講となりましたが、終了後のアンケートでは、実に87%(86名)の生徒たちが、「プログラムⅡ、プログラムⅢに興味がある」と回答。「興味がない」が3%(3名)、「わからない」9%(9名)、無回答1%(1名)という結果でした。


また、自由に記述してもらうところでは、生徒の皆さんから「他の人の意見を聞いて『あー、なるほど!』と思うことが多かったです」「人間と動物はつながっている!ということが一番印象に残りました」「いらない動物は存在しないんだと思いました。みんなそれぞれ役目があるんだと思いました」「動物にあげるものは少ないけど、動物からもらうものは多いんだなと思いました」「私たちは色々な人や動物に支えられているんだなと思いました。ペットを飼っているので最後まで大事に育てようと思いました」「どこにでもいそうなカラスは野生動物だと聞いて少し驚きました。ごみステーションを荒らしているカラスは困っているんだなと思いました」「家畜の動物たちには改めて感謝しようと思いました。動物たちにも私たちと同じ感情があるということを忘れずに接していきたいです」等々、プログラムⅡ、Ⅲにもつながるような感想を寄せてくれました。


こうべ動物共生センターでは、「いのちの教育」プログラムを実施させて頂ける協力校を募集しております。プログラムの内容については以下のリンクをご参照頂き、詳細につきましてはこうべ動物共生センターまでお問い合わせ下さい。