「木下美也子氏講演会」(令和6年6月30日)

こうべ動物共生センターのアニマルセラピー事業の一環として、グリーンチムニーズのファーム教育部長・木下美也子氏を講師にお迎えし、「動物との関わりが子ども達にもたらす影響 —ニューヨーク・グリーンチムニーズの事例から—」と題してお話いただきました。

神戸市ご出身の木下先生には、「こうべ動物共生センター」のセラピー研究フィールドアドバイザーとしてもご尽力いただいています。

アメリカNY州にあるグリーンチムニーズは、1947年にサミュエル・ロス&マイラ・ロス博士によって創設された長期療養型施設で、虐待やネグレクト等、家庭の問題や学校教育になじめず問題行動を繰り返してきた子どもたち約200人が、半数は寮で生活し、半数は自宅から通って学んでいます。

医療関係・教育関係・動物関係等の様々なスペシャリストたちが関わり、動物の世話や園芸・農場プログラム等を通して、それぞれの抱える問題を解決し、再び地域社会へ復帰できるよう取り組んでいます。

最初に見せていただいた動画では、自閉症で「生きることがしんどい」と繰り返し口にしていた男の子が、動物の世話を通して自分に自信がつき、「動物看護師になりたい」という希望を持つことができるようになり、動物関連の学校に進んだと紹介がありました。

グリーンチムニーズでは、広大な自然環境の中で動物や植物の世話をすることで、心理的、行動的、社会的に強く健全な青少年を育て、子どもたちが自分に自信を持てるようになっていくそうです。

また、動物の世話をするためには、自分が穏やかな心でないと動物たちが寄ってこないため、自分が動物たちに受け入れてもらうにはどうしたら良いかということも考えながらお世話をしています。

最近では、以前にも増して施設にいる動物の福祉についても考えられているそうで、直接動物に触らなくても、動物の飲み水を交換する、餌の準備をするなど、触られることで掛かる動物のストレスを減らし、動物自身がそのプログラムに参加したいかしたくないかということについても任せているそうです。

モルモットは自分が参加したくないと思ったら家の中に入ることができます。
参加された皆さんは、とても熱心にメモをとりながら話を聞かれていました。

質問の時間には、「セラピー犬のハンドラーの育成について」「運営にかかる費用について」「動物園の在り方について」など、様々な質問が出ました。

運営費用のことはグリーンチムニーズでも常に苦労をしておられ、子ども1人に対しておおよそ2,500万円ほどの費用がかかるそうですが、子どもにかかる費用は州政府及び寄附等で賄われているとのことです。

約1時間の講演と30分の質疑応答の時間があっという間に過ぎました。

この講演会についての詳細は、追ってこうべ動物共生センターのウェブサイトにて報告させていただきます。

今回、予定が合わず来場できなかったという方は、是非ご覧いただければと思います。