2023.06.22
令和5年度「いのちの教育」プログラム プログラムⅠ「私たちと動物との関わり」(6月22日 神戸市立泉台小学校)
6月22日(木曜)、神戸市立泉台小学校の2年生を対象に「いのちの教育」プログラムを実施し、2クラスの子どもたちにクラスごとに「プログラムⅠ 私たちと動物との関わり」を学んでもらいました。
こうべ動物共生センターでは、子どもを対象とした動物共生教育事業として「いのちの教育」プログラムを導入しています。「いのちの教育」プログラムは、2012年に奈良県で開発された主に小学生を対象としたプログラムで、こうべ動物共生センターの啓発・教育事業運営を受託している公益社団法人Knotsが、奈良県と「いのちの教育」普及展開についての連携協定を結び、11年にわたってプログラムの普及展開や内容のブラッシュアップなどに関わらせていただいています。現在、この「いのちの教育」プログラムは、宮崎や明石市、八王子市などの多くの自治体で導入されていて、日本全国の自治体から先進的なアクティブラーニングとして関心を集めています。
「いのちの教育」プログラムは、プログラムⅠ~Ⅲの3つのプログラムで構成されています。プログラムⅠでは、子どもたちが大型の張り子を「街」「牧場」「自然」の3つのすみかに運び、それぞれの動物が、その環境や人間とどのようにつながっているのかを考えます。
今回実施のご依頼をいただいた神戸市立泉台小学校は、去年も実施させていただいた小学校で今年も元気な2年生の子どもたちに会えました。
最初に子どもたちに「自分は人間だと思う?」と尋ねました。
「えっ?」と子どもたちは首をかしげながら手を挙げてくれました。次は「人間ではないと思う人?」と問うと「あっ、人間ちゃうかも!さる!昔、人間はさるやったから!」という意見がでると「そうやった!進化したんだ」とどちらのクラスも意見が変わる子どもたちがいました。次に「みんなはひとりで生きていますか?」という質問に対して、人間である自分がひとりで生きているのかを考えます。「学校で先生に勉強教えてもらっている」「友達と一緒に勉強している」「友達と一緒に休み時間遊んでいる」「給食一緒に食べている」「家では家族と過ごしている」といったように家族や先生、友達などとの日々の関りを発表してもらうと「ひとりで生きているのではない」「人間同士はつながっている」ということに気づきます。
次に人間と動物はつながっているかな?と子どもたちに問いかけます。どちらのクラスも「つながっている」「つながっていない」の両方に意見が分かれました。
そこで人間と動物がつながっているのか、つながっていないのかを一緒に考えていきます。
私たちの身の周りにある場所を大きく3つに分け(「街」「牧場」「自然」)、この3つの場所をすみかとしている動物たちについて考えました。
このプログラムで活躍してくれるのは張り子の動物です。本物の動物だと車での移動や、子どもたちに触れられることは動物がストレスを感じるため、動物が受けるストレスに配慮することは動物福祉の観点からとても重要であると考えています。また、生体を使用しないことで子どもにアレルギーがあったり、動物が苦手な子どもも授業に参加することが可能であり、さらに伴侶動物(ペット)、産業動物(家畜)、野生動物と分類した多様な動物との関わりを同時に学ぶことができる内容です。本物の動物でなくても、張り子の動物でもイメージが広げられます。「本物の動物ではないけれども、本物の動物だと思って優しく運んでね」と約束します。
子どもたちはペアを組んだ友だちと3つのすみかのどこにいるのか話しあい、協力して動物を優しく運んでくれます。もうひとつの約束は自分と思う場所とは違う場所に動物を友だちが置いても「そこ違うで!」などの指摘はその場ではしないでというもの。後で意見を発表してもらう時間は作ってあるので、その時まで取っておいてもらいます。正解を導きだすことが目的ではなく、それぞれの子どもたちの考えを尊重するプログラムです。子どもたちは目を輝かせながら、友だちと協力して張り子の動物を優しく抱っこして移動してくれました。
全ての動物を3つのパネルの周りに置き終わった後、約束していましたので「自分はこう思う」と発表してもらいます。3つのすみかに2人で考えて移動した動物が、そこは違うと思う意見と、そこへ置いた子どもの意見の両方を聞きますが、半分の動物がパネルの所からいなくなったクラスがありました。
例えば「鳥は自然にいるけど、街にもいる」「犬は街にいるけど、牧場にもいる」という意見などがありました。ここでは、正しいすみかに置くとではなく、子どもたちが自分たちとそれぞれの動物の関わりについて「気づく」ことが大切になります。
「街」で暮ら、人間が最後まで世話をするのが「ペット」、「牧場」で人間の健康のために役に立つ肉や卵、毛など利用するために飼育され、人間がお世話するのが「家畜」、「自然」で暮らし人間が世話をせず、自分たちの力で生きているのが「野生動物」ということを、自分たちがすみかに置いた張り子の動物たちを見て気づいていきます。「自然」で暮らしている動物は「共生動物」や「共存動物」といった意見も聞かれました。
例えば犬が山にいたという意見があり、自然にもいるといった意見がありましたが「人間が最後までお世話していない?」と問いかけると子どもたちはペットだと気づいていきます。また、ウサギのように、ペットでもあり野生動物でもあり、家畜しても飼育されている国もあるので、こうした動物は私たち人間と様々な関わり方をしているということに気づきます。
「ペット」と暮らしている子どもたちは自分の経験をもとに、ペットを飼ったことがない子どもたちには想像してもらい、ペットと暮らすとどのような気持ちになるかを発表してもらいます。子どもたちは笑顔で「かわいい!」「一緒に遊ぶと楽しい」「癒される」「しあわせな気持ちになる」など多くの意見が聞けました。「家畜」からは肉やミルク、卵や毛など人間の役に立つものを与えてくれています。それがもらえることで私たち人間は「健康」でいられることが分かり、「野生動物」と私たちが自然の中の空気と水を共有していますが、それらが汚れていると健康被害に及ぶため、きれいに保つことでお互いが「安心」して暮らしていけることにも気づいていきます。このような気づきを通して、「人間と動物はつながっている」のだと学びを深めます。
最後は全員で「人間と動物はつながっている!」と声に出して締めくくり、プログラムⅠを終了しました。キーワードになる言葉に対しては次回のプログラムにつなげるための記憶の固定化という工夫が成されています。
このプログラムⅠでは「私たちと動物との関わり」に気づくことがねらいとなっています。
次の授業は約3週間後の7月中旬です。子どもたちがプログラムⅠで学んだ内容を振り返り、プログラムⅡへと進みます。