2022.06.09
令和4年度「いのちの教育」プログラム プログラムⅠ「私たちと動物との関わり」(6月9日神戸市立泉台小学校)
6月9日(木曜)、神戸市立泉台小学校の2年生を対象に、「いのちの教育」プログラムを実施し、2クラスの子どもたちにクラスごとに「プログラムⅠ 私たちと動物との関わり」を学んでもらいました。
こうべ動物共生センターでは、子どもを対象とした動物共生教育事業として「いのちの教育」プログラムを導入しています。「いのちの教育」プログラムは、2012年に奈良県で開発された主に小学生を対象としたプログラムで、こうべ動物共生センターの啓発・教育事業運営を受託している公益社団法人Knotsが、奈良県と「いのちの教育」普及展開についての連携協定を結び、10年にわたってプログラムの普及展開や内容のブラッシュアップなどに関わらせていただいています。現在、この「いのちの教育」プログラムは、宮崎県や明石市、八王子市などの多くの自治体で導入されていて、日本全国の自治体から先進的なアクティブラーニングとして関心を集めています。
「いのちの教育」プログラムは、プログラムⅠ~Ⅲの3つのプログラムで構成されています。プログラムⅠでは、子どもたちが大型の張り子を「街」「牧場」「自然」の3つのすみかに運び、それぞれの動物が、その環境や人間とどのようにつながっているのかを考えます。
今回、実施のご依頼があった神戸市立泉台小学校は、小学校として「神戸市初」の「いのちの教育」プログラム実施校となります!子どもたちに「泉台小学校のみんなが、神戸で初めてこのプログラムを勉強するんだよ!」と伝えると、最初はやや緊張気味の子どもたちが笑顔になり、「やった~!」と拍手喝采で授業がスタートしました。
子どもたちには、まず最初に「自分は人間だと思う?」と尋ねました。「人間やで~」とほとんど全員の手が挙がる中、どちらのクラスでも、「サルかも…」「昔、サルやったし」という意見が聞かれました。
「みんなはひとりで生きていると思いますか?」という質問に対して、人間である自分がひとりで生きているのかどうか考えます。「家族と一緒にご飯を食べる」「学校で友だちと遊ぶ」「先生に勉強を教えてもらっている」といったように家族や友だち、先生との日々の関わりをイメージすると「自分はひとりで生きているわけではない」「人間同士はつながっている」ということに気づきます。
それでは、人間と動物はつながっているのでしょうか?子どもたちに聞いてみると、「つながっている」「つながっていない」の両方に意見が分かれました。
そこで、人間と動物がつながっているのか、つながっていないのかを一緒に考えるために、私たちの身の周りにある場所を大きく3つに分け(「街」「牧場」「自然」)、その3つの場所をすみかとしている動物たちについて考えました。
このプログラムに登場するのは、本物の動物ではなく、張り子の動物です。車での移動や子どもたちに触られることへの動物のストレスに配慮することは、動物福祉の観点からとても重要であると考えています。また、生体を使用しないことで、アレルギーがあったり動物が苦手な子どもも授業に参加することが可能となります。さらに伴侶動物(ペット)、産業動物(家畜)、野生動物と分類した多様な動物との関わりを同時に学ぶことができる内容になっているため、生身の動物が目の前にいなくても、張り子の動物が子どもたちのイメージを広げてくれます。
張り子の動物たちをそれぞれのすみかに移動させるとき、本物の動物を扱うように優しく運ぶことを子どもたちと約束しています。「本物の動物ではないけど、本物だと思って運んでね」と伝えると、子どもたちはそっと抱え上げ、友だちと協力して、どの動物がどのすみかにいるのか、相談しながらゆっくり優しく運びます。
そしてもうひとつのお約束は、自分が思っている場所とは違う場所に動物が置かれたとしても、「そこじゃないで!」などの指摘はしないこと。このプログラムは正解を導き出すことを目的としたものではありませんので、それぞれの子どもたちの考えを尊重しながら進めます。
すべての動物を3つのパネルの周りに配置し終わった後、意見交換タイムで「自分はこう思う」と発言してもらいます。「ペットとして飼われているけれど自然の中でも暮らしているのではないか」「家畜だと思うけどペットとして飼っている人もいる」という意見も出ます。ここで大切なことは、正しいすみかに置くことではなく、子どもたちが自分たちとそれぞれの動物との関わりを考えて「気づく」ことです。
「街」で暮らし人間が最後まで世話をするのが【ペット】、人間の健康のために役に立つお肉や牛乳、毛などを利用するために育てられ、人間が最後までお世話をしているのが【家畜】、「自然」で暮らし人間が世話をせず、自分たちの力で生きているのが【野生動物】であることを、自分たちがすみかに置いた張り子の動物たちを見ながら気づいていきます。
例えば、カラスは住宅街にも牧場、自然の中にもいますが、「人間が最後までお世話をしますか?」という問いかけをすると、子どもたちは自ずとカラスは野生動物だと気づいていきます。また、ウサギのように、ペットでもあるし野生動物でもあり、また海外では家畜として飼育されている動物もいます。こうした動物は、私たち人間と多様な関わり方をしているということに気づきます。
【ペット】と暮らしている子どもたちが「かわいい」「一緒に遊ぶと楽しい」「撫でていると幸せな気持ちになる」というような「癒しの気持ち」の実感を語ってくれると、飼育経験のない子どもたちもペットとの暮らしを想像することができます。
【家畜】からは肉やミルク、卵や毛糸等の人間の役に立つものを与えてもらうことで、私たち人間が「健康」でいられることを認識し、【野生動物】と私たちが自然の中の空気と水を共有していて、それらが汚れてしまうと健康被害に及ぶため、きれいに保つことでお互いが「安心」して生きられることにも気づいていきます。このような気づきを通して、「人間と動物はつながっている」のだと学びを深めるのです。
「人間と動物はつながっている!」と全員で声に出して締めくくったところでプログラムⅠは終了しました。プログラムの要所要所で声に出して読み上げるところがありますが、キーワードとなる言葉に対しては、次回のプログラムにつなげるために記憶の固定化という工夫も成されています。
このプログラムⅠでは「私たちと動物との関わり」に気づくことがねらいとなっていますが、プログラムⅡでは、この「気づき」を経て、動物たちの気持ちを想像して「共感」することがテーマとなっています。動物にも感情があり、人間と同じようにたったひとつの「いのち」を持っているということを学びます。
次回の授業は、約1ヶ月後の7月中旬。子どもたちがプログラムⅠで学んだ内容を振り返り、プログラムⅡへと進みます。(つづく)