令和5年度「わんちゃんお出かけセラピー」(10月25日)

10月25日(水曜)、こうべ動物共生センターの事業で初めての試みとなる福祉施設への訪問ふれあい活動を、《アニマルセラピー動物ふれあい事業》の一環として行いました。

こうべ動物共生センターがあるしあわせの村には、高齢者や障がい者の施設が複数ありますが、今回は村内の高齢者施設「神港園しあわせの家」で「わんちゃんお出かけセラピー」を実施させていただきました。

「神港園しあわせの家」では、以前に施設内でわんちゃんを飼っておられたそうですが、その犬が亡くなってからは施設の皆さんが犬とふれあう機会が無かったため、今回の活動を施設の利用者の皆様はとても楽しみにしてくださっていたそうです。

実施にあたっては、公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)様より獣医師の先生とボランティアの皆さんが、5頭のわんちゃんを連れて来て下さいました。

日本動物病院協会は動物の診療を行う動物病院が集まって作られた団体で、診療以外にも社会福祉施設等を訪問して、動物の持つ温もりや優しさにふれていただくふれあい活動(CAPP)のボランティアもされており、当センターのこども向けプログラムでもご協力いただいています。
CAPPとは「人と動物のふれあい活動(Companion Animal Partnership Program)」の略称で、その歴史は大変長く、これまでにJAHAが、2万2千回以上実施してきた中で、一度も咬傷事故などの事故が起こっていない実績がある取り組みです。

公益社団法人日本動物病院協会 アニマルセラピー人と動物のふれあい活動(CAPP)について

施設の利用者17名が待っている会場にわんちゃんたちが登場すると、少し緊張ぎみだった皆さんがすぐに笑顔になりました。今回はハロウィンの季節ということで、わんちゃんたちも少しだけ仮装をして参加してくれました。

共生センターの適正飼養アドバイザー会議でもお世話になっている村田香織先生から団体の紹介とCAPPについての簡単なお話があった後、それぞれの飼い主さんがわんちゃんの特技を披露しながら自己紹介をしました。足の間をくぐり抜けたり、輪っか状にした手の中をジャンプしたりする姿に、参加した皆さまから拍手が起こりました。

場の雰囲気が和んだところで、さっそく皆さんのところへ行って、わんちゃんたちとのふれあいを体験していただきました。

小型犬を膝の上に乗せて、その暖かさや息づかいを感じていただくようにしています。膝の上でふれあうときには、タオルやブランケットを敷いた上にわんちゃんを乗せています。

中には、これまでに一度も犬に触ったことがないのか、少し躊躇しておられる方もおられましたが、一度撫でてみると急に穏やかな笑顔になる姿がとても印象的でした。また、わんちゃんを撫でながら、以前、飼っていたわんちゃんの話を懐かしそうに話してくださる方もおられ、施設のスタッフの方は、「皆さんが普段見せないような笑顔を見せてくれている」とびっくりされていました。

ふれあいをされた皆さんはわんちゃんに対してとても優しく接してくださり、わんちゃんも穏やかに撫でてくれる皆さんに心を許したのか、膝の上ですっかりくつろいでいる様子でした。

人間と犬との関わりは1万5000年以上前からといわれていますが、長い共生の歴史の中でお互いに心の扉を開く相互作用があり、現在では家族の一員として大切な存在になっています。

今回の訪問活動には、神戸市ご出身の獣医師で、日本動物病院協会を設立された91歳になられる加藤元先生が見学にお越しくださいました。

先生は、人と動物と自然を大切にするヒューマン・アニマル・ネイチャー・ボンドの理念のもとに活動を続けてこられ、長年にわたって最先端のアメリカの小動物獣医学と教育を日本に紹介されてきただけでなく、日本中の大学やアメリカの大学でも指導をしてこられました。

JAHAの訪問活動には、参加基準を満たしたわんちゃんと飼い主さんが参加しており、わんちゃんの事前の健康チェック、前日のシャンプーなどの衛生面の他、犬にかかる負担軽減のルールなどが細かく規定されています。

そうした基準をすべてクリアした上で実施されていますので、施設の管理者の皆さまも安心して受入れてくださっています。

先程の自己紹介のパフォーマンス以外にも、皆さんのそばでわんちゃんがタンバリンを叩いたり、ボールを投げてもらって持ってくるなどの特技も披露してくれました。

「私もわんちゃんにふれあいたい!」と途中から参加される方もあり、最終的に25人ほどの利用者様にわんちゃんとふれあっていただきました。

利用者の皆さまからは、「かわいいね」「わんちゃんとふれあいができて良かった」「また来て欲しい!」などの感想をいただきました。

秋晴れの爽やかな天気の中を、しあわせの村内を加藤先生の車椅子を押してふれあい室に戻り、先生にこうべ動物共生センターの視察もしていただきました。村内には犬連れの方が散歩している姿も多数見受けられ、子どもから大人まで、高齢者や障がいのある方も、誰もが共に幸せにひとときを過ごすことができる場に、「最高ですね!」とのお言葉をいただきました。

こうべ動物共生センターでは子どもの教育や市民へのの啓発だけでなく、しあわせの村のビジョンでもあるソーシャルインクルージョンや人と動物の共生の視点から、しあわせの村内の施設等との連携した事業の成果を広く市民へ発信し、「人も動物もずっと一緒に幸せに暮らせるあたたかな神戸市」を実現するための事業を行っております。

また、セラピー研究フィールドを設置して、アニマルセラピーに基づいた研究を行っており、《アニマルセラピー動物ふれあい事業》として「わんちゃん読書会 (R.E.A.D.プログラム)」を実施しています。下記のページをご参照ください。

こうべ動物共生センター アニマル研究フィールドについて

令和4年度「わんちゃん読書会 (R.E.A.D.プログラム)」実施報告
令和4年度「アニマルセラピー動物ふれあい事業」研究報告