令和5年度「いのちの教育」プログラム プログラムⅠ「私たちと動物との関わり」(7月5日 神戸市立真陽小学校) 

7月5日(水曜)、神戸市立真陽小学校の3年生を対象に「いのちの教育」プログラムを実施し、2クラス合同で「プログラムⅠ 私たちと動物との関わり」を学んでいただきました。

昨年は1校のみでしたが、その学校での実施内容が大変評価が高かったため本年度も同小学校での実施が決まり、それに加えて今年度は2校目の実施となります。
文部科学省の学校指導要領でも、生命に関する学習活動や他者への思いやりの心を醸成する道徳教育が求められていますが、この「いのちの教育」プログラムは動物や自然のモチーフを入り口として、「自分を含めたあらゆるいのちを尊重し、愛し、共感する」という教育効果が高く評価されており、日本全国の自治体から先進的なアクティブラーニングとして関心を集めています。
こうべ動物共生センターでは、子どもを対象とした動物共生教育事業として「いのちの教育」プログラムを導入していますが、今回実施をさせていただくことになった神戸市立真陽小学校ではすでに「いのちの安全教育」という教育内容に取り組まれており、子どもたちが「いのち」について学ぶことの意義を大切に考えておられる学校です。
真陽小学校での実施は3年生を対象にし、2クラス合同で実施させていただくことになりました。スタッフも初めての学校ですし、子どもたちも初めて体験するプログラムなので始まる前は少し緊張していましたが、教室に並べられた大型の張り子の動物を目の前にすると、元気一杯に授業に参加してくれました。

この「いのちの教育」プログラムは、プログラムⅠ~Ⅲ「気づき」「共感」「責任」の3つのプログラムで構成されています。プログラムⅠ「気づき」では、子どもたちが大型の張り子を「街」「牧場」「自然」の3つのすみかに運び、それぞれの動物が、その環境や人間とどのようにつながっているのかを考える内容になっています。

最初に「自分は人間だと思いますか?」と質問をしてみました。一瞬、「えっ?」と教室が静かになりましたが、「にんげんです!」と全員が手を挙げてくれました。
次に、「みんなはひとりで生きていますか?」という質問をしてみました。普段あまり深く考えたことは無いと思いますが、人間である自分はひとりで生きているのかを考えてもらいます。
「起きる時は誰かが起こしてくれる」「学校で先生に勉強を教えてもらっている」「友達と一緒に勉強するし、遊ぶし、給食も一緒に食べている」など発表してもらうと、人間はひとりでは生きているのではなく、人間同士は「つながっている」ということに改めて気づきます。
「人間と動物はつながっているかな?」という問いには、「つながっている」「つながっていない」と意見が両方に分かれました。では、つながっているのかつながっていないのか、皆で一緒に考えてみることにしました。

私たちの身の周りにある場所を、「街」「牧場」「自然」と大きく3つに分け、それぞれの場所をすみかとしている動物たちについて考えてみます。「街」に住む伴侶動物(ペット)、「牧場」で生活をしている産業動物(家畜)、「自然」の中で生きている野生動物に分類し、多様な動物と人間の関わりについて学びます。

「街」「牧場」「自然」の3つのすみかにそれぞれの動物を運んであげるのですが、そこで大型張り子の動物の登場です。移動や触れられることでの動物へのストレスに配慮し、またアレルギーがあったり動物が苦手な子どもが安心して授業に参加することができるように、このプログラムでは張り子の動物を使用しています。張り子の動物を運んでもらう前に、いくつか約束をしてもらいます。
「本物の動物ではないけれども、本物の動物だと思って優しく運んでください」ということと「ペアを組んだお友だちと、どの動物をどのすみかへ運ぶのかを話し合い協力して動物を運んでください」ということ。そしてもうひとつの約束は、友だちが自分が思うのと違う場所に置いても「そこ違うで!などの指摘はその場ではしない」ということです。後で意見を発表してもらう時間は作ってあるので、そのときまで取っておいてもらいます。

ここでは正解を導きだすことではなく、自らその関係性に「気づく」ということを重視しています。

大切に優しく運んで移動させてくれます
お互い納得するまで話し合ってくれました

全ての動物を3つのパネルの周りに置き終わった後、「置かれた動物が、自分が思うすみかとは違う」という意見を発表してもらいます。
「ウサギは家でも飼われていて街にいるけど、自然にも牧場にもいる」「インコは自然にはいない」「奈良県では街に鹿がいる」など意見が聞かれました。2人で話し合って置いてくれた子どもにも、そこへ置いた理由を聞きます。その意見を聞くと「ほんまや!」などと声が上がり、友だちが発表している意見を真剣に聞いている姿勢がみられました。意見が分かれた場合は、その動物は一旦横へ移動して後で考えることにします。

「街」で暮らしているのは、どんな動物でしょうか?人間が最後までお世話をし、「ペット」と呼ばれています。「牧場」では、人間の役に立つ肉や卵、毛など利用するために飼育され、人間がお世話をしている「家畜」。「自然」で暮らしていて、人間が世話をせず自分の力だけで生きているのが「野生動物」です。子どもたちはそうした違いや関わり方を、自分たちが置いた動物たちを見て気づいていきます。
この気づきから、一旦横に移動させた動物をすみかに戻してあげることにします。「人間が最後までお世話しますか?」「自分の力で生きていないかな?」などと問いかけると、それぞれのすみかへ置くことができます。子どもたちの意見の中にもありましたが、ウサギのようにペットでもあり野生動物でもあり、家畜して飼育されている国もあるので、私たち人間と様々な関り方をしているということにも気づいていきます。

次は、人間と動物との「つながり」について考え、「ペット」と暮らすとどのような気持ちになるかを発表してもらいます。「かわいい」「癒される」など、一緒にいると「いいきもち」になることが分かります。「家畜」からは人間に役に立つものを与えてもらって、それによって「健康」に暮らせることが分かり、「野生動物」とは直接関わってはいないように思いますが、実は自然の中で水や空気を共有していて、それらが汚れていると安心して暮らしていくことができません。なので、お互いが安心して暮らしていけるように、人間は自然環境を守るという役割があることに気づきます。この気づきを通して「人間と動物はつながっている」と学びます。
授業の最初には「にんげんとどうぶつはつながっているのかな?」とクエスチョンマークがついていましたが、最後に全員で「人間と動物はつながっている!」と大きな声に出して終わりました。
「声に出して読む」というのは、キーワードとなる言葉を次回のプログラムにつなげる記憶の固定化のために有効であり、このプログラムでは随所にこうした工夫が成されています。
「今度、プログラムⅡをしに来るときまで、今日勉強したことを覚えていてね」と言うと「やった!また来てくれるんだ!」と大きな拍手までしてくれました。教室を出ていくときに、「楽しかったよ~」「今度っていつ?」「動物アレルギーがあるんだけど、張り子の動物で勉強できてうれしい」などの感想を聞かせてくれる子どもたちもいました。

次回は、9月にプログラムⅡの授業を実施予定です。1年間を通してプログラムⅠ〜Ⅲを受講していただき、「気づき」「共感」「責任」という3つのステップをとおして、あらゆる「いのち」に共感し、「いのち」を大切にしようとする心を育む授業を行います。

「振り返り」というのは教育において重要な要素ですので、次回の初めにプログラムⅠで学んだ内容をしっかり振り返り、プログラムⅡ「共感」へと進みます。