2022.09.04
令和4年度 獣医師体験プログラム「野生動物との共生」(9月4日)
9月4日(日曜)【小学校低学年対象】と23日(金曜・祝日)【小学校高学年~中学生対象】の2日間にわたり、株式会社野生動物保護管理事務所の箕浦千咲先生をお迎えし「野生動物との共生」をテーマにお話をしていただきました。
私たちの周りには、イノシシ、サル、タヌキ、シカ、クマなど、たくさんの野生動物がいます。野生動物とは、人間からエサを与えてもらったり世話をしてもらうことなく、自分たちの力だけで生きている動物のことです。
そして、野生動物の獣医さんは「生き物の繋がりと住処を守る」と同時に、「生態系」を守る「地球のお医者さん」の役目を担っています。
「生態系」とは、私たちが生きる地球という環境の中で、生き物同士がつながっている相互作用ことです。海には海の、山には山の、川には川の生態系があって、どの生態系もすべてが繋がっているのです。しかしながら、今、その生態系が崩れてきていると言われています。
では、なぜ「生態系」が崩れてきているのでしょうか。様々な要因がありますが、山の生態系でいえば、シカが増えすぎたことが挙げられます。シカが増えすぎたことで草や木の皮を食べつくし、それを食べて生きている虫や、その虫を食べている他の動物などが生きていけなくなっています。生態系の一番下の土台が少なくなることで、他のたくさんの生き物がいなくなってしまうのです。
また、人間が野生動物に近づきすぎていることも要因のひとつに挙げられます。本来の野生動物の住処を奪ってしまったり、街に降りてきた野生動物にエサを与えることで、人間を怖がらず街中に出てくるようになってしまいます。
そのため、「地球のお医者さん」の役目を持つ野生動物の獣医さんは、畑に野生動物が入らないように柵を工夫したり、野生動物のエサになるどんぐりを山に植えたり、街におりてきた動物を麻酔で眠らせて山に帰したりということも行っているそうです。野生動物が本来の住処で安全に暮らしてほしいと願って、様々な工夫をしながら生態系を守っているのです。
そして、先生が以前働かれていた対馬に暮らすツシマヤマネコのお話も聞かせていただきました。現在、対馬には100匹程度しかツシマヤマネコがいないそうです。そのツシマヤマネコを守るために事故などで傷ついたヤマネコを保護して治療した後、リハビリを行い自然に返すことをしたり、死んでしまったヤマネコは死んだ理由を突き止めるため、レントゲンを撮ったりするそうです。死んでしまったヤマネコに4匹の胎児がいたことがあるそうで、結局、この事故で5匹のヤマネコが亡くなってしまったことになります。ヤマネコを増やすために、車の事故を減らす取り組みや、ヤマネコの食べ物を増やすような取り組みもしているそうです。
動物の足跡当てクイズもあり、画面に写された足跡のイラストを見ながら、「この足跡はなんの動物でしょうか?」との問題に、子どもたちも熱心に考えて答えていました。この動物たちの足跡は、野生動物の生息状況を調査するのに役立つのでとても重要だそうです。
そして、最後に「生態系」を守る5つのルールを教えてくださいました。
1.近づかない(近づきすぎると人を怖がらなくなる)
2.エサをあげない(人間の美味しい食べ物の味を覚えると人の住処に出てきてしまう)
3.むやみに触らない(動物が見られたり、触られたりすることでストレスを感じたり、動物から病気が感染することもある)
4.逃がさない(犬や猫だけでなく、一度飼った動物は最後まで責任を持って飼う)
5.ゴミはきちんと捨てる(人間の捨てたゴミのせいで、動物が苦しむことになる)
野生動物と人間が幸せに暮らせるよう、この5つを守ることで、私たちも「地球のお医者さん」になれるのです。
お話が終わった後、先生が持って来てくださったクマの毛皮やシカ、キツネ、サルなどの頭蓋骨、モグラやイタチのはく製を、子どもたちは臆することなく興味津々で触っていました。
こうべ動物共生センターの獣医師体験プログラムは、幅広い獣医師の世界を体験し、学びを深めることにより、人と動物の共生が私たちの生活に深く関わるものであることへの気づきを促し、様々な人と動物の共生の在り方について理解を深めます。10月以降も「小動物」「大動物(馬)」「大動物(牛)」「産業動物」をテーマに開催いたしますので、皆様のご参加をお待ちしております。