獣医師体験プログラム「多様な動物が生きる地球という環境」

7月29日(金曜)、神戸市立王子動物園の馬場拓也先生を講師にお招きし、「多様な動物が生きる地球という環境」と題してお話をしていただきました。




まず、「地球という環境を維持していくために」というテーマの中で、「多様性」「現在の地球環境の状況」についてという、大きな2つの項目について説明していただきました。

ここでの「多様性」には、「生態系の多様性(山・川・海などの自然環境)」「種の多様性(それぞれの環境の中に色々な動物が暮らす)」「遺伝子の多様性(同じ種の動物でも大きさ、色等個体差があり特徴がある)」の3つが挙げられ、特に動物園の役割においては、「種の多様性」と「遺伝子の多様性」に深い関わりがあるそうです。

「現在の地球環境の状況」では、燃料や資源の確保のために森林を伐採して木材や紙の原料として利用するため、人間の都合で森林の破壊が進行しているという現状についても教えていただきました。



森林がなくなると、そこで暮らしていた動物たちが暮らせなくなります。また、一見豊かな森だと思われても、同じ種類の木(パーム椰子等)ばかりが人工的に植えられていると動物が暮らせる環境が無くなり、動物たちの命が失われていきます。また、森林伐採以外に森林火災等でも多くの動物たちの住処や命が奪われています。

今、地球上には66,476種の哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類が存在していますが、そのうちの約20%にあたる14,049種がすでに絶滅、あるいは絶滅の危機に瀕していると言われています。

次に、「動物園の役割」についてもお話しいただきました。動物園には「レクリエーション」「教育」「調査・研究」「種の保存」の4つの役割があります。動物園における「レクリエーション」は、「命の大切さ」「生きることの美しさ」を楽しみながら感じてもらうことです。「教育」は、実際に動物の匂いや鳴き声等に触れて体験してもらい、生態の理解とともに野生動物の減少・環境の悪化について考えるきっかけを提供することです。「調査・研究」においては、動物たちの様子を細かく観察し、飼育や治療、繁殖に活かしていきます。「種の保存」とは、絶滅しかけている生き物を動物園で増やし、破壊された本来の生育地を再生し、飼育下で繁殖させた個体を本来の生息地に戻していくことで、この野生復帰のために、日本国内や世界中の動物園とも連携しながら種の保存に取り組み、王子動物園でも絶滅危惧種の動物たちを飼育しています(ジャイアントパンダ・アジアゾウ・ユキヒョウ・ホッキョクグマ・チンパンジー等)。

国内の動物園では約150種の希少動物の血統登録を行っており、血統登録台帳というものが作られているそうです。これは、日本国内の動物園にいる個体数を把握し、繁殖や移動の計画書を作成し計画的に個体数を増やすためのものです。血統登録については日本国内だけでなく、世界規模でも行われており、それを国際血統登録といいます。




さらに、カビパラの人工保育、パンダの血圧測定やカバの歯の治療、ゾウやウサギの採血、ライオンの治療等、日頃の動物たちのケアの様子の映像を交えながら、動物園の獣医師の仕事についても教えていただきました。動物たちの健康管理のための検査や治療を行うにあたって、体に触れたり、診療器具(聴診器や注射針等)を使用しても落ち着いてじっとしていられるよう、日頃から飼育員の方々が動物たちのトレーニングを行っています。動物たちの好物をごほうびに使って行うトレーニングの様子も紹介していただきました。トレーニングされたカバは飼育員さんの指示で歯肉炎の治療の間、口を大きく開けていました。



ライオンやトラなどの治療の時は麻酔を使用します。麻酔で眠らせた後、ワクチン接種や爪切り等を行うだけでなく、病気等で治療が必要な場合は治療を行います。



今回の獣医師体験プログラムでは、私たちの身近にある動物園という場所で、日々、飼育員と獣医師が連携しながら仕事をしていることや、動物の住む環境が地球環境にまで関わってくるのだということを知ることができました。

お話が終わった後は、先生が持って来てくださったダチョウの卵やゾウの牙のレプリカ、クジャクの羽根、ホシガメの甲羅などを手に取りながら先生に熱心に質問する姿が見受けられました。



獣医師体験プログラムは、様々な現場でご活躍の獣医師の先生方に講師をお願いし、幅広い獣医師の世界を体験していただく内容となっております。今後も野生動物、小動物、大動物、産業動物等の分野ごとにテーマを設け、⼈と動物の共⽣というものが如何に⼈の⽣活に深く関わるものであるかということを学びます。

参加希望の方は下記のリンクより日程をご確認の上、お申し込みください。



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