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獣医師体験プログラム①「お肉はどこからくるの?」

5月22日(日曜)、令和4年度 第一回獣医師体験プログラムを開催しました。

今回は、神戸市行政獣医師で食肉衛生検査所の南優姫先生をお迎えし、「お肉はどこからくるの?」と題してお話をしていただきました。

昨日の曇り空から一転した快晴のお天気のもと、小学1年生から中学2年生まで8名の子どもたちが参加してくれました。



今回のお話は以下の3つが主な内容でした。

①いのちがお肉になるところ

②お肉の安全と危険

③獣医のお仕事

まず始めに、「うちは精肉店」という写真絵本の読み聞かせをしてくださいました。



この本は、大阪府貝塚市にある江戸時代末から7代続いた精肉店が牛を育て、屠畜し、解体するまでの最後の仕事をつづった写真絵本です。

この精肉店は市場で仕入れた子牛を肉牛に育て、その牛を解体し、精肉して売るまでをすべて家族ぐるみで行っている精肉店でしたが、長年使ってきた「貝塚市立と畜場」が閉鎖されることになり、平成23年秋、精肉店で行っていた屠畜・解体の仕事に幕を閉じました。

生きものとしてあった名前が、食べものや物の名前へと変わっていく。肉、内臓、骨、皮、血、それぞれが、余すことなくそれぞれに生かされ、おいしい肉となり、皮は太鼓へと形を変えて生まれ変わる。生きもののいのちをいただいて、いのちを生かす。「生きるということはいのちを繋ぐということ」と先生が話されました。そして、「いのちをいただいているということを忘れず、感謝して食べてほしい」とも子どもたちに伝えておられました。

次にスライドを見ながら、お肉についてのクイズです。

生野菜のサラダの上に生肉が一緒にあります。

この写真でおかしいところはどこでしょうか?



この写真を見て気をつけてほしいことは、生肉とサラダは一緒にしないということです。

生肉についていた菌が野菜に付着し、それを食べると食中毒などの病気になる可能性があるからです。

焼肉を食べに行ったとき、生肉と野菜を一緒のお箸で使っていませんか?

牛のお肉には、O157という菌がいるかもしれないということは、是非覚えておいてもらいたいことです。

O157は、牛のお腹の中にある一定数いる菌です。きちんと火が通っていないお肉を食べて、発症したという人もいます。

また、牛以外にも鶏肉にも豚肉にもそれぞれが持っている菌があって、その動物は大丈夫でも、人間が感染すると食中毒をおこしたりして危険な場合があります。

・つけない

・ふやさない

・やっつける(絶対にやってほしいこと=加熱する!)

ということが、美味しくお肉を食べるうえで大事であり、気を付けてもらいたいことです。

行政獣医師の仕事の大切な役割として、食肉市場でのと畜検査員としての仕事があります。



これは、「病気をもっていないか」「衛生的に解体できているか」「有害な物質が残っていないか」ということを検査する仕事です。

まずは、「病気をもっていないか」というテーマのお話です。

病気の牛は廃棄になるため、病気の場合は、何の病気なのか、人間が食べても大丈夫な病気なのかを調べます。例えば、牛が風邪をひいていたら廃棄になるでしょうか?人間でも同じように調子が悪くなるときがありますよね?牛は肺炎になりやすい動物だそうですので、肺炎や風邪だから食べられないということではなく、きちんと検査をして、その牛を食べても大丈夫かどうか獣医師が専門的な知識で判断をしています。

前述のとおり、病気の動物は廃棄になってしまいます。これは、人間を守るためだけではなく、動物を守るために廃棄する場合もあるとのことです。例えば、一昨年、26年ぶりに豚熱が発生しましたが、これは豚同士の感染率が高く致死率も高いため、健康な豚を守るために感染した豚を廃棄することになります。

こうした様々な予防策や検査を受けて、食用として合格ならお肉に合格の印が押されます。そして、お肉屋さんやスーパーへ卸されるのです。


「衛生的に解体できているか」については、ウンチとの闘い!だそうです。牛は生きて屠畜場にやってきます。なので、当然、ウンチやおしっこなどの排泄もします。ウンチには危険な菌が含まれていることが多く、手や解体するナイフにウンチが付いたままにしないことが必須です。いろいろなところにそれらの菌を付けていないかということを記録を取ったり見て回ったり、基準に則って点数をつけたり、また必要があれば指導をしたりすることで、食べるお肉の安全を守っています。



では、「有害な物質が残っていないか」の有害な物質とはなんでしょうか?薬が毒にもなるということを聞かれたことがあるかと思います。例えば、草にまく除草剤や作物に散布する殺虫剤、そういったものが草や虫をとおして動物の身体に入って体内に残っていると、そのお肉を人間が食べるということになります。残った薬の量が多ければ多いほど危険になりますので、適切な量を使用しているかをチェックすることが大切なのです。それは動物が食べる餌にも同じことが言えます。

獣医師の仕事は、動物の病気を治す、検査をするだけの仕事だと思われがちですが、「ワンヘルス=人の健康を守るために動物や生態系の健康を守る、そして家畜や野生動物の健康を守ることが人の健康を守ることにつながる」という概念を大切にした取り組みが世界的に広がってきています。動物との共生という観点から、人の健康や生活を支えている獣医師がいるということも知っておいてもらいたいことです。



質問タイムには、熱心に話を聞かれていたお父様からの質問も多く、「イノシシやシカなど、そういった野生動物の検査はあるのですか?」という質問には、「法律の規定はないため、獣医師が検査をしていない、ジビエが盛んなところでは独自でそういった決まりをつくっているところもあります」とのお答えがありました。

子どもからは、「犬や猫の専門の獣医師さんになるにはどうしたらよいですか?」という質問があり、

「専門の獣医師は、みなさん独学で学んでこられた方々です。牛専門やエキゾチックアニマルの専門になる先生は、大学を出て獣医師として臨床経験を積んだり学会などで調べたりして、生涯、専門の知識をたくさん積まれています。大学で学ぶのはあくまでも獣医学全般の基礎的な知識です。

と細かく丁寧に答えていただきました。

終了後のアンケートからは、「獣医師は動物病院ではたらいていると思っていたが、はばが広かった」

「お肉にはいろいろな菌がついているかもしれないというのをしれてよかったです。」などの声が寄せられました。



今後もいろいろな専門の獣医師から話を聞くプログラムを予定しています。

皆さまのご参加をお待ちしております。


獣医師体験プログラム