令和4年度「介助犬と歩こう!」(4月23日)
4月23日(土曜)、今年度第一回目の「介助犬と歩こう!」を開催しました。
今回は、しあわせの村まつり「春まつり」との同日開催のため、しあわせの村の温泉健康センター体育館をお借りしての開催でした。
土曜日ということもあって参加された方も多く、立ち見のお客様も出るほど盛況でした。
今日は、認定特定非営利活動法人兵庫介助犬協会・理事長の北澤光大さんと介助犬のPR犬アリシアちゃん(4歳のゴールデンレトリバーの女の子)が来てくれました。
最初に介助犬の仕事の説明などをしていただいた後、デモンストレーションを見せていただきました。
車いすを利用されている方が、例えば家の鍵を落としてしまったというとき、拾おうとして前かがみになると転倒の危険性があります。
そんなとき、介助犬が鍵を拾って持ってきてくれることで、転倒のリスクも減り、安心して出かけることができます。
アリシアちゃんは「テイク鍵」の指示で上手に咥えて届けることができ、「ギブ」の指示で膝の上に置いてくれました。
「テイク」は「咥える」、「ギブ」は「膝の上に置く・届ける」ことです。
また、最も転倒の危険性が高い車いすへの移乗の際など、移乗しようとして車いすから落ちてしまったというようなとき、転倒したままだと命に危険が及ぶ場合があるかもしれません。「テイク携帯」との指示で携帯電話を持ってきてくれるトレーニングも行っているため、いざというときに助けを呼ぶことができます。携帯電話そのものを咥えると画面が割れてしまうため、携帯電話に付けられた紐を咥えて持ってくることで、画面の破損を防ぐように工夫されています。
このように、介助犬が生活動作を助けてくれることで、安心して日常生活をおくることが出来るのです。
お金やカードなども上手に咥えて届けることができます。
お金やカードなどのように小さかったり薄かったりするものは、奥歯で噛んでしまうとカードに傷がついたり歯型がついたりして、使用できなくなる可能性があるため、前歯や舌を使って優しく咥えます。
次は冷蔵庫を開けて、中から飲み物を持ってきてくれました。
障害をお持ちの方の中には、自律神経がうまく働かず汗をかきにくいため、こまめな水分摂取の必要がある方もおられます。
普段、冷蔵庫の中にはいろいろな物が入っているため、持ってきてもらう飲み物に紐をつけ、その紐を目印にして持ってきてくれます。
前もって目印になるように、お茶や経口補水液には紐をつけてもらっているそうです。
アリシアちゃんは上手に冷蔵庫を開け、中の飲み物を咥えたら冷蔵庫のドアまでちゃんと閉めて届けてくれました!
その他にも、靴や靴下を脱がせてくれる介助も見せてくれました。
靴や靴下は踵の部分を引っ張って脱がせてくれます。
このようなことが出来るまで、どのくらいの訓練期間が必要になると思いますか?
だいたい1年半から2年くらいの訓練が必要だということです。
1歳まではパピーウォーカーの元でいろいろな社会経験を積みながら生活し、そのあと訓練を開始します。
ですから、介助犬としてのデビューは3歳くらいからで、10歳くらいまで仕事をするそうです。10歳といえば人間の年齢に換算すると60歳から65歳ということで、人間でもちょうど定年になるくらいの歳ですね。
では、介助犬がどのように訓練をしているかというと、遊びの応用で行っているということです。
ボールや紐を使って、引っ張り合いをして遊びながら、犬が強く紐を引っ張ると訓練士が紐を離す。するとそれが自分のものになる。そうしていくうちに引っ張る動作が楽しくなり、そこから例えば冷蔵庫のドアを開けるという方法を教えていくということでした。
同時に、冷蔵庫のようなドアを開けることを教える際、「プル」と言いながら繰り返すことで、「プル」の指示でドアを開けることが出来るようになります。
デモンストレーションの後は、参加者の皆さんと中央緑道を歩きました。
戻ってきてからは、質疑応答の時間です。
参加者の皆さんからの「介助犬はどんな犬種が向いていますか?」との質問には、「70%くらいがラブラドールレトリバー、20%がゴールデンレトリバー、10%はその他の犬種です。電車に乗ったりしたときに、大きな犬が乗ってくると乗客が驚いてしまったりするので、温厚そうに見える犬が多いです」とのこと。
また、「介助犬が病気やケガで病院に行く必要があったときはどうするのですか?」との質問には、「ユーザーの方が病院に連れて行く場合もあるし、通院できないというときは介助犬協会で一時的に預かって連れて行くこともあります」ということでした。
子どもさんからは「どんな食べ物が好きですか?」と聞かれ、それには「アリシアはドッグフードを食べますが、なんでも好きですよ」とお答えいただきました。
他にも「どのような犬が介助犬に向いていますか?」という質問には、「頭が良いとかそういうことではなく、実は、どこでもリラックスできるということが必要な要素です。ユーザーの足元で寝ている介助犬を見て、『疲れているんですね、かわいそうに』と言われる方がいますが、決してそうではなくリラックスしているだけなんです」とのこと。実際、今回も体育館内で、別のプログラムを実施されていたブースの風船が割れる音が大きく響いたのですが、アリシアちゃんはその音にも全く動じることなく気持ち良さそうに床に寝そべっていました。
今回は、事前申込で予約ができなかった方から多数お問い合わせをいただきましたので、通常のプログラムが終わった後、15時から当日来られた方のためにデモンストレーションを見せていただきました。
当日参加の方だけでも14人も来てくださり、皆さん熱心にデモンストレーションを見ながら「介助犬って賢いなあ!」と感嘆の声をあげられていました。
また、「ベストを着用している間は仕事の時間なので、声をかけたり触ったりせず優しく見守っていてください」とのこと。「ベストを脱いだら普通の家庭犬と同じです」ということで、デモンストレーション終了後は、アリシアちゃんとのふれあいの時間。参加された方はアリシアちゃんを撫でて交流することで、楽しいひとときを過ごされていました。
約60年の歴史のある盲導犬と比べると、1993年から育成がスタートした介助犬は約25年と歴史が浅く、2021年11月現在の実働頭数は、盲導犬の861頭に対して57頭(2021年10月1日 厚生労働省調べ)と非常に少なく、認知度も低い状況です。補助犬の正しい理解を深めていただくことを目的とした啓発イベントが毎年12月の障害者週間を中心に全国で開催されていますが、兵庫県においても兵庫介助犬協会様主催で開催されています。しかしながら、ペットと間違われてお仕事中に触りに来る方が多かったり、まだまだ社会全体に対する理解が不十分なようです。
また、介助犬利用者の方は思いがけない事故や病気などで身体が不自由になられた方も多く、介助犬と共に暮らすことが心の拠り所となって自分らしい生活を取り戻し、社会参加へとつながることが大切な役割となっています。しかし、介助犬一頭の育成には250~300万円の費用がかかると言われており、介助犬の普及啓発の支援として実施しているこのプログラムを通してその必要性を周りの方に正しく伝えていただくことで、少しでも多くの方に介助犬についての理解を深めていただきたいと思います。 次回の「介助犬と歩こう!」は下記のリンクよりお申し込みください