令和3年度 獣医師体験プログラム 「私たちの暮らしと動物とのかかわり」(2月5日)

2月5日(土曜)、兵庫県農業共済組合阪神家畜診療所 所長の畠中みどり先生を講師としてお招きし、産業動物をテーマに「私たちの暮らしと動物とのかかわり」と題した獣医師体験プログラムを開催しました。


日々、牛や豚など、私たちが身近に接している産業動物の診療に奔走しておられる先生のお話はとても興味深く、この日は牛についてお話しをして頂きました。私たちはお肉や牛乳として牛に関わることが多いのですが、牛がどういった動物なのかといった内容や、どんな病気をするのか、産業動物獣医師の仕事はどういったものかなど多岐にわたり、1時間があっという間に過ぎました。

但馬牛・神戸牛を「たじまうし」・「こうべうし」と呼ぶ場合は牛のことを指し、「たじまぎゅう」・「こうべぎゅう」と呼ぶ場合は肉のことを指すということや、兵庫県の牛の飼養頭数(乳牛1万3千頭、肉牛5万7千頭)など地域に密着した内容についても教えて頂きました。


牛の個体識別番号がマイナンバーに相当するというお話を聞き、「牛にもマイナンバーがあったなんて初めて知りました」という感想も聞かれました。生まれた年や生まれた場所、どこで育ったのかがわかるようになっているのだそうです。



牛は私たちが想像している以上に頭がよく、200頭くらいの牛の顔は判別できるようですが、それ以上だと混乱してしまうため、200頭までのグループにしているのだそうです。
乳牛であるホルスタインは暑さやストレスに弱いことなど、知っているようで知らない牛の知られざる一面を教えて頂きました。

牛に胃が4つあるということを初めて知ったというお子さんもいました。
食べたエサを貯める役割のある200リットルもの容量の第1胃では、微生物が食物繊維を分解し、ハチの巣のような第2胃は第1胃のエサを口に戻したりエサを混ぜて移動させます。

第3胃はエサをすりつぶす役割を果たし、まだ固いものは第1胃へ戻します。
第4胃はヒトの胃と同じ働きをし、ドロドロの液になるまで消化。それぞれの胃に違った役割があるのだと学びました。



牛の病気には、風邪、下痢、腹痛などの内科的なものや、蹄(ひづめ)の病気のような外科的なもののほか、子牛には中耳炎もよく見られるそうです。
骨折については、幼い牛であればギプスで固定すれば治るそうですが、成牛にはピンを挿して固定させて回復した治療例もあり、学会発表をされた内容も聞かせて頂き、まるで大学の講義のような場面も!

また、牛にも人間と同じような健康保険があり、農家さんの掛け金と国からの補助金で成り立っているとのことで、牛の場合は1割負担なのだとか。



そして、産業動物獣医師は往診がほとんどであり、それは牛を連れてくることができないから、という理由に「なるほど」と参加者の皆さんも納得していました。診療の要請があって一軒一軒の農家を回る往診という診療形態は、牛のストレスを軽減すると共に、飼育環境が確認できるという利点もあるそうです。

また、先生が、「いつもは治療で調子の悪い牛の姿しか見ていなかったため、日ごろの元気な様子も見ておく必要があると思って、牛の美人コンテストや品評会なども見に行きました。家で犬や猫を飼っている人は日ごろの元気な様子を知っておくことで、調子が悪くなった時にすぐにわかるようになりますよ」とお話しされ、ちょうどわんちゃんと一緒に付き添いで来られていた保護者の方も頷かれていました。



病気の治療だけでなく、牛の出産の介助なども産業獣医師の仕事の一つで、農家の方々に「ありがとう」と言って頂けることが嬉しいのはもちろんのこと、「安心・安全な食品を生産する手助けをしたい」という使命感を持って仕事をされていると伺い、私たちの暮らしと動物との関わりの中で、まさに生産者と消費者の橋渡しをして頂いているのだと感じました。

子どもたちからは「牛の体重は何キロくらいあるのですか」と質問があり、「宮崎県や鹿児島県の肉牛は800kgくらいですが、兵庫県の牛は少し小さくて700㎏くらい」と教えて頂き、小さくても700㎏もある牛の体重に、子どもたちも驚いていました。

プログラム終了後には牛の模型を囲み、みんな熱心に先生に質問をしていました。



次回は、いよいよ今年度最後の獣医師体験プログラム「感染症」についてです。

皆様のご参加をお待ちしております。

参加を希望される場合は下記のリンクよりお申し込み下さい。



獣医師体験プログラム⑦「感染症」